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タカタ問題 問われる政府対応 [自動車]


 12月5日、タカタ製エアバッグのリコール(回収・無償修理)問題で、日本の国土交通省は前例がない「調査リコール」を自動車メーカー各社に要請する方針だ。写真はタカタの広告。9月撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 5日 ロイター] - タカタ<7312.T>製エアバッグのリコール(回収・無償修理)問題で、日本の国土交通省は前例がない「調査リコール」を自動車メーカー各社に要請する方針だ。欠陥の原因が判明していない段階での予防的な行政措置で、全米での調査リコール実施を受けて行う構え。

だが、現行制度ではそうした要請の法的根拠は必ずしも明確ではない。問題の解決に向けて日本の監督制度がどう機能するか、政府の対応が問われている。

<「米と同様の措置を実施」>

通常のリコールは事故や故障などの発生や拡大を未然に防ぐのが目的。日本では、自動車の構造や装置などが「道路運送車両法」に基づく保安基準を満たしていなかったり、その恐れがある場合、メーカーが国交省に事前に届け出て実施する。設計や製造に問題があるとの判断が前提になる。国交省は届け出内容が不適切であれば改善を指示。また、メーカーが自主的にリコールせず、事故が頻発した場合は勧告・命令を行う。

一方、調査リコールは、問題の原因が明確になっていない段階で、メーカーがその調査のために自主的に実施する措置。米運輸省の道路交通安全局(NHTSA)は11月、タカタと自動車メーカー各社に対し、事故が多発している高温多湿の地域に限定してきた調査リコールを全米に広げるよう要請した。

国交省は、全米にリコールが拡大された場合、日本国内でも米国と同様の措置を自動車メーカーやタカタに指示する方針を固めている。同省としては初めて、事実上の「調査リコール」を要請することになる。同省リコール監理室の佐橋真人室長は「早く原因を解明し、国民を安心させる」ことが監督官庁の責務だとして、新たな措置の必要性を強調する。

<明確でない行政権限>

しかし、そうした異例の措置には不透明な点もある。国交省が検討する日本国内での調査リコールは、全米リコールの実施が前提だが、米国内のリコールが今後どれほど早く、どういう形で実現するかはまだ見通しにくい。

また、現行の道路運送車両法では、国交省が海外で起きた事故を理由にリコール勧告できるのかは明確ではない。原因が特定されていない段階での勧告も原則できない。そのため、誰がリコール費用を負担するのかといった問題も生じる可能性がある。

現行法制の問題点について、青山学院大学の廣瀬久和教授(専門は民法・消費者法)は、国内でリコールされていなくても、日本製品を利用している世界のユーザーの安全をいち早く守るために、同省がより主体的かつ柔軟に企業を指導・監督できるよう「道路運送車両法を抜本的に改正すべきだ」と主張する。

2009年から10年にかけて起きたトヨタ自動車<7203.T>のリコールでは、当時の民主党政権の前原誠司国交相が、ハイブリッド車「プリウス」の不具合をめぐる情報が適切に国交省に伝わっていなかったとしてリコール制度の見直しに動いた。メーカーが自主的に情報を集めて対応する仕組みは維持しながらも、国の監視や技術検証の機能強化を目指したが、廣瀬教授は制度が「根本的に改善したとはいいがたい」と話す。   

2000年代前半に表面化した三菱ふそうトラック・バスのリコール隠し問題で、ユーザー側に立って同社に対する損害賠償請求訴訟に取り組んだ赤坂野村総合法律事務所の野村吉太郎弁護士は「政府と産業界との間に良い意味での緊張関係がない。政府は本当の意味での監督役になれていない」との見方を示す。

文教大学の長田洋教授は、国交省が企業に「もっとコミット(関与)して改善させることが未然防止になる」と指摘する。トヨタのリコール問題で、品質管理体制を改善するために同社が設置した第三者機関の外部専門家として問題の検証にあたった経験を踏まえての提言だ。

<「受け身」が続いた行政対応>

「ものづくりの日本への信頼感や安心感、日本メーカーに対する高い評価を揺るがしかねない。一刻も早く解決する必要がある」――。太田昭宏国交相は11月28日の会見で、同月21日に自動車局長ら8人からなる対策推進本部を設置したことを明らかにした。同本部は「タカタと毎日連絡を取り合い、定期的にミーティングを開いて情報交換している」(同省幹部)という。

だが、タカタのエアバッグによる事故の多発がすでに米国を中心に国際的な問題になっている中で、国交省の対応が遅れているとの印象は否めない。国内では2009年に初めてホンダ<7267.T>によるリコールがあり、特に昨年春、今年6月以降にも自動車メーカー各社が立て続けにリコールを実施している。タカタのエアバッグによる最初の死亡事故は09年5月に米国で発生し、これまで海外で計5人の死亡が報告されている。

日本では死傷者は出ていないが、シートが焦げるなどの焼損事故が4件起きていた。にもかかわらず、日本の監督官庁は先月まで具体的な対策に乗り出した様子が見られず、「長らく受け身の姿勢だった」との指摘も少なくない。

タカタの清水博シニアバイスプレジデントが11月20日の米上院公聴会で行った証言によると、同社が最初にエアバッグの不具合に気づいたのは2005年。その後、最大納入先のホンダは07年に3件の破裂事故が起きたことで本格的な調査を開始、08年11月に初めて米国でリコールに踏み切った。国交省の佐橋室長によれば、同省にも同じ08年11月に初めてホンダから連絡が入ったという。海外でリコールする場合、同省にも必ず報告することになっているためだ。

<「日本たたき」に懸念>  

経済産業省もタカタや自動車メーカー各社と会合の場を持ち、リコール拡大に備え、交換用エアバッグが確保できるかどうかなどの議論を重ねている。同省としての懸念は、この問題が世界的な「日本たたき」に発展しかねないかという点だ。現時点では国交省が所管するリコールの問題として受け止めているものの、事態が悪化すれば日本の自動車産業全体にマイナスとなるため、経産省幹部は「タカタはもっと緊急性を感じて動いてほしい」と話す。

一方で、消費者の不安も高まりつつある。「タカタ製エアバッグ、うちの車のどの席に使われてますか」。ホンダのお客様相談センターにはこんな問い合わせが国内で1日数百件にも上っているという。ユーザーを中心に愛車の危険性を心配する声は国内でも広がっており、監督官庁による行政措置の行方にも関心が高まっている。


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